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2023.02.06
契約書のリーガルチェックの重要性と6つのチェックポイント

契約書のリーガルチェックとは、取引先から提示された契約書について確認する作業の事ですが、ビジネス目線だけでなく、法的な問題点がないかどうかや、取引内容に合致しているか、予期しない隠れたリスクが生じないか、などをチェックすることをいいます。今回は、リーガルチェックの重要性と確認しておくべき注意点について解説します。

リーガルチェックの必要性

リーガルチェックは、取引先との後の不要なトラブルを防ぐため、契約前に行う事前準備の一つです。
これを行わなかった場合、想定されるトラブルとして下記の3点が挙げられます。
まず、1つ目は、契約書を作成した際に、法令で認められていない内容を条項に書いてしまうことが考えられます。仮にそのまま契約締結となった場合、法令で認められていない内容が契約書に存在することで、契約の一部が無効になり、契約書が思うように役目を果たさないという結果になる可能性があります。また、契約書に記載すべき事項が法令で定められている場合など、記載事項が抜けている場合には、法令違反として制裁や重大な不利益を被る可能性があります。
2つ目は、テンプレートを利用して契約書を作成する場合の落とし穴です。法令は日々改正されていきます。そのため、使用したテンプレートの内容が過去の内容のものである場合、不備やリスクが生じる可能性も出てきます。また、実態にあわない契約書の内容となっているケースもあり、契約条項から、自社としては思っていなかったような義務が発生し、それを果たせなければ結果的に契約違反として責任を問われることになる危険性があります。
3つ目は、相手から提示される契約書の場合、自社が一方的に不利益となるような条件で契約締結してしまう可能性があります。相手からもらった契約書の一部だけを確認して締結してしまった場合、後に自社に重大な損害が出てしまったり、不利な立場に立たされたりというケースも実際にあります。

リーガルチェックする契約書の例・種類

リーガルチェックを行う対象となる代表的な契約書の例は、次のとおりです。

秘密保持契約書

一定の情報を第三者に対して開示しないこと、情報の利用目的を定め目的外使用を禁止することや、情報の取り扱いのルールを定める内容を持つ契約書です。

売買契約書

不動産・動産に関する売買取引の条件を定める契約書です。売買の対象物・価格・危険負担・保険・引渡し方法など、売買にまつわる詳細の条件を定めます。

業務委託契約書

業務委託契約書は、サービスや成果物の提供を目的とする契約書です。ソフトウェアの開発委託、コンサルティングの委託などの契約書の性質は、基本的に業務委託契約書となります。サービスの内容は非常に多岐にわたるため、サービスの性質に応じた条項を備えているか、重要な内容が明確に定められているかなどの確認が必要になります。

基本契約書

反復して生じる取引の基本条件を定めるのが基本契約書です。メーカーなどに多い資材取引基本契約書、提供するサービスの基本条件を定めるサービス基本契約書など、基本契約書があると、個別の取引は簡易な個別契約書により進められます。

ライセンス契約書

ライセンス契約書は、ソフトウェアの著作権・特許権などを持つライセンサーから、ライセンシーに利用する権利を設定する契約書です。許諾する利用内容・利用形態と、許諾範囲外の利用形態の理解、第三者からの権利侵害の主張があった場合の、ライセンサー・ライセンシーそれぞれの責任範囲や役割などを定めておくことが重要となります。

リーガルチェックの流れ

法律事務所や弁護士などにリーガルチェックを依頼する場合の一般的な流れを紹介します。
まずは、取引先から提示された契約書、または自社で作成した契約書を用意します。
あらかじめ自社の情報をまとめておき、自社の意図に沿った内容かを確認してもらうため、合意したい内容を別途整理して準備しておくことが重要なポイントです。会社の資本金や従業員数などの違いで適用が変わる法律もあるため、間違えるとリーガルチェックの意味が薄くなるため注意が必要です。
リーガルチェックについては、取引から予想されるトラブルリスクを想定したうえで、そのトラブルに対する対策を契約条項としてあらかじめ入れておくという視点が不可欠です。
企業から、取引のトラブルについて相談を受け、どんなトラブルが起こりやすいか、どういった対策をしておけばよいかという点に最も精通している弁護士に契約書のレビューを依頼することが適切だと言えます。

リーガルチェックの依頼先

リーガルチェックの依頼先は、弁護士など専門家以外にもあります。
自社の法務部では、自社の事業内容や取引をよく理解しているので、情報共有やリーガルチェックが迅速に進められます。また、場合によっては、ごく短期間で緊急に対応してもらえるなど、ビジネスの要求に即した対応を得やすいところもメリットです。そのため、自社に法務部がある企業では、法務部が大半の契約書のファーストレビューを行っています。
また現在は、リーガルチェックを自動でできるとうたうAIツールも開発され、提供されています。
AIツールを利用してリーガルチェックを行う場合であっても、後述する6つのチェックポイントについては、自社でよく確認することが必要です。

企業の法務部が担う主な役割

企業の法務部は、法令に関連するさまざまな業務を行います。
法務部が担う主な役割は、法務相談、各種規程の整備、機関法務、労務トラブル対応などですが、中でも、特にメインとなる業務の一つが、契約書のリーガルチェックです。

法務部が行う契約書のリーガルチェックの主な目的

法務部が行う契約書のリーガルチェックの1つ目の目的は、トラブルを未然に防ぐことです。あらかじめ取引内容を把握した上で、当事者間で合意した契約内容が契約書に十分織り込み済みかを確認することで、トラブルを未然に防ぐことが可能となります。
2つ目の目的は、万が一トラブルに発展してしまった際に、自社が想定外の不利益を被らないようにすることです。内容をしっかりと精査し、自社にとって不利益な箇所がないか、必要以上にリスクを抱えていないかどうかを検証したうえで、許容できない項目については相手先企業と交渉するなどの対応が求められます。
そして、3つ目の目的は、知らず知らずのうちに法令違反になってしまう事態を予防するものです。契約の内容や種類によっては、契約内容自体が法令違反となってしまうもの、契約書に記載すべき項目が法令により定められているものが少なくありません。このような場合、事前にリーガルチェックをすることで、法令違反を防ぐことが可能となります。

契約書チェックを弁護士に依頼する主なメリット

法務部の業務は繁忙期に合わせて人員を確保しておく必要がありますが、法務部の担う業務は専門性が高く、繁忙期だけ他部署の人材に業務を割り振ることなどは難しいと考えられます。一方、法務部を外注した場合には、必要なときだけ依頼することができるため、自社で常に多くの人員を抱える必要がありません。また、弁護士は、法的なトラブル解決の専門家であるため、契約書チェックを担う法務部を外注することで、一定の水準が担保されたリーガルチェックを行うことができるため安心です。
法務部の役割を弁護士へアウトソーシングすることで、万が一トラブルに発展した場合にも対応がスムーズとなるでしょう。

契約書のリーガルチェックの6つのポイント

専門性の高いリーガルチェックですが、押さえておくべきポイントが6つあります。これらを理解しておくことで過不足なく確認できるようにしておきましょう。

自社の目的や取引の実態に即した内容かチェックする

契約書に取引の目的・実態が適切に反映されているかを確認するため、関係各所への十分なヒアリングを行う必要があります。契約内容と取引の目的・実態との整合性について、少しでも疑問に思う点があれば、所管部に十分なヒアリングを行いましょう。

トラブルを想定した内容にする

損害賠償に関する条項、解除、途中解約に関する条項のほか、秘密保持義務の範囲なども、トラブル防止の観点から熟慮すべき事項です。また、実際にトラブルがあった場合の処理手順を、明確な形で契約書に盛り込んでおくことも重要になります。秘密保持契約、売買契約、ライセンス契約など、それぞれの契約内容に応じて、トラブルの予防・対処の観点から十分な内容になっているかをチェックしましょう。

関連する契約書との整合性をチェックする

関連する契約書と矛盾した内容の契約書を締結したり、過去の契約変更などを見落としたまま契約書を締結したりすると、業務に支障が生じることがあるだけでなく、業種によっては法令違反のリスクが生じます。
新規に契約書を締結する際には、過去に締結した関連契約との整合性を確保するため、関連契約すべてに目を通しながらリーガルチェックを行うことが大切です。

自社にとって不利な条項や抜け漏れがないかをチェックする

基本的に相手方から提示される契約書は、相手方に有利な条項が多く含まれています。そこで、一方的に相手方に有利であったり、不合理な条項についてはチェックし、必要に応じて修正、または削除し、取引の条件としてフェアなものになるようにします。また、条項に不足・抜け漏れがないかチェックし、取引条件の中で明確に記載すべきであるのに記載していない条項や、関係法令に基づき記載すべき条件などを必要に応じて加筆します。

関係する法令等を調査する

契約条項に記載されていない事項については、法令の規定の適用が排除されていない限り、法令の規定に従った処理が行われます。そのため、取引に適用され得る法令を理解しておくことは非常に重要です。また、強行法規違反、公序良俗違反、その他不法行為を内容とするような契約条項がある場合には修正が必要ですので、その点でも法令リサーチは大きな意味を持ちます。

契約書内の用語などについて不明点を確認する

契約書には、各業界や各企業内の専門用語など、一般的ではない用語が使用されている場合があります。しかし、契約書の言葉が明確でないと、当事者間の認識の相違が生じてしまう可能性があるほか、契約の対象サービスや製品のような重要な要素にも誤認が生じてしまうことがあります。難しい業界用語などが曖昧な表記の場合は、誰が見ても理解できるような言葉に言い換えするなどの対応をしておきましょう。

まとめ

リーガルチェックを行うと、ビジネスを円滑に進めるためのさまざまなメリットがあります。契約書の内容に違法な内容がないか、または法令が求める記載事項を満たしているか等の確認を契約締結前に行い、問題があれば修正、加筆し、相手に変更の提案をしておくことで、トラブルの少ない円滑なビジネスを進めることができます。リーガルチェックに関しては法務部のアウトソーシングという方法もありますので、自社で人員を確保することが難しい場合には、検討してみるとよいでしょう。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。
慶應義塾大学環境情報学部、青山学院大学法科大学院卒業。企業法務、国際取引、知的財産権、訴訟に関する豊富な実務経験を持つ。日本及び海外の企業を代理して商取引に関する法務サービスを提供している。2008年に弁護士としてユアサハラ法律特許事務所に入所。2012年に米国カリフォルニア州に赴任し、 Yorozu Law Group (San Francisco) 及び Makman and Matz LLP (San Mateo) にて、米国に進出する日本企業へのリーガルサービスを専門として経験を積む。
2014年に帰国。カリフォルニアで得た経験を活かし、日本企業の海外展開支援に本格的に取り組む。2017年に米国カリフォルニア州法人TandemSprint, Inc.の代表取締役に就任し、米国への進出支援を事業化する。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所を開設。世界市場で戦う日本企業をビジネスと法律の両面でサポートしている。
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