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2022.02.07
フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイントとは(加盟店の立場から)

「フランチャイズ契約」については、小売業については中小小売商業振興法に基づく情報の開示(書面交付による説明義務)、独占禁止法に基づく情報の開示など、法律上の義務が課される場合があります。本稿では、

フランチャイズ契約を締結する前に是非知っておきたい法律知識と、フランチャイズ契約書のレビューポイントを解説します。

フランチャイズ契約におけるトラブルの例

フランチャイズ契約は独立した事業間の契約という前提の元に締結されるものです。事前に確認した上での合意にも関わらず、よく下記のようなトラブルが見られます。

  • 契約時の説明と売上予測が異なる
  • 中途解約した際に加盟金が返還されない
  • 近隣に新たな加盟店が出来た
  • 契約時にロイヤリティの負担、計算方法が正確に把握出来ていなかった
  • 取引先の制限項目が強く仕入コストの負担が大きい
  • 必要な研修を実施してくれない、またはロイヤリティに含まれると思っていた研修費を請求された
  • 契約終了後、同業種の事業を行うことができない

このようなトラブルを防ぐためには、事前にチェックしておくべきポイントがあります。

フランチャイズ契約とは

「一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会」による「フランチャイズ」の定義を要約すると下記のとおりになります。

「事業者(「フランチャイザー」)が他の事業者(「フランチャイジー」)に対し、商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。」

つまり、加盟金を支払うことで、知名度のある名前や成功ノウハウを使用して事業を行うことができる利用許諾契約ということになります。

フランチャイズ契約によって加盟店が得られる権利

商標等の使用許諾

フランチャイズ契約においては、本部が加盟店に対し、本部の商標、商号等の使用を許諾するのが通常です。加盟店としては、この本部の商標、商号等を利用することにより、顧客を獲得できるメリットがあります。

本部のノウハウ、フランチャイズ本部が行う経営指導

これまで店舗経営、事業経営などしたことがない方が、一店舗として経営することが出来るようになるのは、本部からノウハウの提供を得られるからです。

仕入、在庫管理、販促、雇用管理、顧客対応など一口にノウハウと言っても様々な要素はありますが、これらについてはマニュアル化されているのが一般的です。

もっとも、これらの提供を受けるためには、単にマニュアル化された文書のみでは不十分で、開業前後において研修の実施が必要になることもありますので、加盟店としてはどのような研修を受けることが出来るのかということは契約前に十分に確認しておく必要があります。

さらに、この研修費用の負担をめぐり争いになることもあるため、加盟金やロイヤリティの中に研修費が含まれるのか、そうでないのかといったことについても、契約上明記しておくことが重要です。

加盟店の商圏、テリトリー制

フランチャイズ契約の中には、商圏に関する事項を定めていないものもありますが、一般的には、加盟店の商圏を確保するために、テリトリー条項が設けられています。この場合、加盟店としては、チェーン本部自らもそのテリトリー内での営業が出来ないかどうかの確認を行う必要があります。また、他の加盟店が、その商圏内で広告宣伝を行うことが出来るのかどうかについても確認しておくことが重要です。

本部事業者が提供すべき情報

フランチャイズ契約は、チェーン本部があらかじめ用意した内容を加盟店が受け容れる形で行われ、また契約期間が長期にわたることが多いため、加盟店が適切な情報を得た上で内容をよく理解することが重要です。

中小小売商業振興法という法律は、本部の会社概要やフランチャイズ契約書の内容を分かりやすく要約して記載した書面を加盟希望者(サービス業でのフランチャイズを除く)に事前に交付し、その内容を説明することを本部に義務づけています。

この書面は、「フランチャイズ契約の要点と概説」、「契約のあらまし」など他の名称で作成されることもありますが、名称はさておき、このような法定開示書面を用いて説明することがチェーン本部に義務付けられていますので、加盟希望者は必ず説明を受けて疑問点の解消につなげてください。

中小小売商業振興法に基づく情報の開示

上記で解説した通り、チェーン本部は自らの事業概要や契約の主な内容等についての情報を、加盟希望者に対して契約締結前に書面で示す必要があり、主な開示項目は下記の通りです。

中小小売商業振興法で定めている主な事前開示項目

① チェーン本部の概要(株主、子会社、財務状況、店舗数の推移、訴訟件数等)
② 契約内容のうち加盟者に特別な義務を課すもの等、加盟者にとって重要な事項
   ・テリトリー権の有無
   ・競業避止義務、守秘義務の有無
   ・加盟金、ロイヤルティの計算方法など金銭に関すること
   ・商品、原材料などの取引条件に関すること
   ・契約期間、更新条件、契約解除等に関すること

※なお、2022年4月1日(予定)以降は、「加盟店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件において加盟希望者と類似するものの直近3事業年度の収支に関する事項」についても、事前開示が要請されることになりますので、本部からの開示がない場合には、その説明を求めるようにしましょう。

独占禁止法に基づく情報の開示

また、公正取引委員会では、独占禁止法に基づき「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズ・ガイドライン」という。)を公表し、その中で契約前に開示することが望ましい項目を示しています。中小小売商業振興法における法定開示書面の交付・説明義務は、小売業と飲食業でフランチャイズ展開をしている本部にのみ適用され、サービス業でフランチャイズ展開をしている本部への適用はありませんが、この「フランチャイズ・ガイドライン」に基づく情報開示は小売・飲食のみならず全ての業種のフランチャイズ・チェーンに関して適用される点で異なります。

本部事業者以外からの情報入手方法

(一社)日本フランチャイズチェーン協会(JFA)では、中小小売商業振興法及び独占禁止法の「フランチャイズ・ガイドライン」に基づいて、会員各社が作成した「フランチャイズ契約の要点と概説」を必要に応じて公開しています。また、経済産業省と日本フランチャイズチェーン協会では、チェーン本部毎の事業概要や契約内容(加盟金、経営、指導、契約の期間・更新・解除等)をデータベース化した、「ザ・フランチャイズ」をインターネット上で公開しています。また、以上のような情報の他にもフランチャイズ情報誌、セミナー、フェア、既存店舗の視察等も活用し、本部の契約内容を事前に比較検討することができます。

契約自由の制限、競業避止義務

競業避止義務とは、そのフランチャイズの加盟店としての業務以外で同種または類似の商品やサービスを取り扱う業務を行ってはならないというものであり、簡単に言うと、加盟店が加盟したフランチャイズの事業と競合する事業(競業)を行ってはならない義務のことをいいます。例えば、ある飲食のフランチャイズチェーンに加盟した人が、自ら別の飲食店を立ち上げたり、他の飲食チェーンに加盟したりしてはいけないということを義務づけるものです。

加盟店に競業避止義務を課す目的として、主に以下二つのものがあります。

  • 本部が開発し、加盟者に提供したオリジナルのノウハウが、関係のないフランチャイズチェーンで利用されてしまうことを防ぐため
  • 加盟者がフランチャイジーとしての営業とは別に類似の営業を行なうことにより、本部の顧客・商圏が奪われることを防ぐため

 

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契約前にチェックすべきポイント

事後のトラブル防止のため、中小小売商業振興法上の開示項目については、最低限把握しておく必要があります。図表(チェックリストなど)を用いて本部事業者の説明のうち理解できたものと理解できなかったものを明らかにしておきましょう。また、事業収支に関する部分についても確認しておきましょう。例えば、店舗取得にあたって保証金(敷金)が必要か、減価償却費が入っているか、什器や機器のリース、クレジット、税金等も計上されているかや、また借入れを行う場合には元金の返済や利息の返済についても把握しておく必要があります。その他にも次に挙げる事項も確認しておきましょう。

経営理念のチェック

本部企業の経営理念に賛同できるかどうか、また、自分が消費者として利用したいと思うチェーンを選ぶことによって、自信をもってフランチャイズ・ビジネスを行うことができます。

立地や商圏をチェック

テリトリー権の有無、内容についても確認することは必須ですが、フランチャイズ契約上でのトラブルでもっとも多いのは、本部から受けた売上予測や経費予測の説明と現実との大幅な差異です。本部の予測や説明だけを鵜呑みにせず、自ら商圏や立地、振れ幅(経済動向、市場環境など)についても調査・検討を行う必要があります。

収益予測のチェック

本部から売上予測を開示された場合には、どのようなデータに基づいているのかを納得がいくまで説明を求めましょう。また、必要経費はどれくらいかについても、見落としが無いようにできるだけ現実に近い数字を事前に算出しておきましょう。確実なビジネス継続のために、収益予測は売上を最小に見積もり、必要経費は最大に見積もることがポイントです。

個人で加盟する場合には、開業後に売上が上がらなかった場合等に経営破綻に陥らないよう、投資金額及び借入金額にも十分留意しましょう。

契約による制約をチェック

フランチャイズ契約には利便性もありますが、一方、様々な制約もあります。例えば、競業避止義務、営業権の譲渡等に本部の許可を得るなどが挙げられます。契約締結の際には、ご自身が受け入れられる内容かどうか十分に検討しましょう。

まとめ

本記事では、フランチャイズ契約を締結する前に是非知っておきたい知識としてチェックポイントをご紹介しました。中小企業庁から出ている「フランチャイズガイドライン」やフランチャイズ協会などの相談窓口もありますので、併せて確認しておくことをお勧めします。本部側、加盟店側双方にとって、トラブルは信用上のリスクを伴うため契約にあたっては、しっかりとリスクを把握し、契約の内容を理解したうえで、締結することが重要です。疑問点や不安な点があれば、専門の弁護士等にレビューを依頼することをお勧めします。

 

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。 慶應義塾大学環境情報学部、青山学院大学法科大学院卒業。企業法務、国際取引、知的財産権、訴訟に関する豊富な実務経験を持つ。日本及び海外の企業を代理して商取引に関する法務サービスを提供している。2008年に弁護士としてユアサハラ法律特許事務所に入所。2012年に米国カリフォルニア州に赴任し、 Yorozu Law Group (San Francisco) 及び Makman and Matz LLP (San Mateo) にて、米国に進出する日本企業へのリーガルサービスを専門として経験を積む。 2014年に帰国。カリフォルニアで得た経験を活かし、日本企業の海外展開支援に本格的に取り組む。2017年に米国カリフォルニア州法人TandemSprint, Inc.の代表取締役に就任し、米国への進出支援を事業化する。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所を開設。世界市場で戦う日本企業をビジネスと法律の両面でサポートしている。
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