契約審査MEDIApowered by 弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

2023.01.19
顧問契約書/コンサルティング契約書の作成で気を付けておくべき事

「顧問契約」や「コンサルティング契約」は、専門的な知識・経験を有する者を受託者とし、その知識・経験に基づいて、経営事項等々についてアドバイスを求めたり、調査依頼を求める者を委託者として、締結される契約です。顧問契約に決まった内容というものはなく、顧問契約を締結する相手方や顧問料の高さに応じて、顧問料の範囲内で受けられるサービスが変わってきます。なぜ顧問契約が会社にとって必要なのかという「顧問契約の目的」をよく考えましょう。そして、その目的を達成するためには、どのようなサービスを提供してほしいのかを考え、適切な内容の契約書を作ることが必要です。

上記を踏まえ、今回は顧問契約書作成時、記載するべき内容と特に気を付けておいてほしい点について解説します。

顧問契約書作成の流れ

契約書の詳細な内容についてお互いに協議することからスタートします。

顧問料の範囲内で、どのようなサービスを受けられるのか、顧問料の金額はどれくらいなのか、どのような場合に別途料金が発生するのかについて確認します。

他にも、別途料金が発生する場合の料金の計算方法や、契約を解約した場合の顧問料の処理についても相談しておきます。

契約書で定めるべき内容

契約書は話し合いの内容に沿って作成しますが、専門家との顧問契約の場合は、専門家側で基本契約書を定めている場合が多いため、そちらを内容に合わせて変更・追記する形で使用する事もできるため、契約書について問い合わせてみるとよいでしょう。一般的な契約書で定める記載事項は、以下の通りです。

第1条(契約の目的)

顧問業務に係る契約書であることを明示し、依頼する側と依頼される側がどちらかはっきりわかるように記載します。

第2条(顧問業務の範囲)

業務内容の範囲を記載します。
依頼を受託する側は、あまり業務量が多くなると報酬に見合わない状態になってしまう事があります。そこで、別途料金が発生する業務があればそれを明記したり、毎月の業務時間の上限を設けたりするなどの方法をとるとよいでしょう。一方で、委託する側はできるだけ幅広く助言を受けられるようにしておきたいため、記載する文言については広義に定めるような工夫をしておくとよいでしょう。いずれにしてもお互いに納得のいく内容を記載することが大切です。

第3条(顧問業務の遂行方法)

具体的には、顧問業務を「電話やメールで行うのか、あるいは実際に面談して行うのか」、「面談で行う場合に場所はどこか」などといったことを記載します。受託者側の担当者を指定したい場合や、毎月のレポートを提出してほしい場合など、受託者・委託者双方の希望があればここに記載しておきます。

第4条(再委託)

ここでは受託者側が他の第三者に業務を外注することを認めるかどうかについて記載します。
委託者側としては、もし外注を認める契約条項にする場合でも、外注については事前に自社の承諾を得ることを要求する契約条項としておくことをおすすめします。外注を許可制にすることにより、どの業務がどの外注先に外注されているのかを自社でも把握できるようにしておきましょう。一方、受託者側の立場からは、業務を外注できなければ不都合な場合もありますので、そのような場合は、委託者の承諾を得なくても外注できるようにしておくと便利です。しかし、委託者側からは、外注先の業務について受託者側で責任をもつよう契約内容に定めることを求められる場合も考えられます。

第5条(契約期間)

コンサルティングを受ける委託者側の立場からすると、コンサルティングは受けてみなければその内容に満足できるかどうかわからない性質のものであることを理解しておく必要があります。そのため、契約期間の途中でも、コンサルティングの内容に満足できなければ途中解約できる条項をいれておくことが重要です。一方で、受託者側の立場としては、短期間で解約されると成果や利益が出せない性質の業務の場合、最低契約期間を定めておくことで、その期間中は解約できない内容とすることも検討するとよいでしょう。

第6条(報酬と報酬の支払い時期)

毎月定額の報酬とするパターンや業務に従事した時間数に応じて「1時間あたり○○円」など定めるパターンがあります。売上や利益を基準とする場合は、基準となる売上や利益をどのように計算するのかという点まで定めておかないと、報酬額の計算方法をめぐってトラブルになりますので注意してください。

第7条(知的財産の帰属)

契約期間の業務過程で、一定の成果物(報告書やコンテンツなど)が生じる場合があります。この場合、著作権がどちらに帰属するのか、という争いも生じやすくなりますので、知的財産権の取扱いについても定めておくことが一般的です。受託者側の立場からは、自社が元々もっていた著作物を、後日他社にも提供するような可能性がある場合には、著作権譲渡の対象から除外することを明記しておきましょう。

第8条(禁止事項)

企業秘密に係るなど、自社ノウハウの漏洩を防ぐために、委託者側としては、同業の他社へのコンサルティングサービスの提供を禁止する内容の契約条項を入れる場合はこちらに記載します。

第9条(秘密保持)

契約の前提として、顧問契約というのは、委託者側の製造ノウハウや営業機密などを受託者に開示することが多い契約です。このことを考慮し、委託者側としては、業務遂行過程で知った情報を他の目的で利用されないためにも、秘密保持に関する合意をしておくことが必須といえます。

第10条(損害賠償)

顧問業務の遂行過程、またはその結果としてなんらかの損害が発生した場合に、その対応及び責任の範囲について定めます。

第11条(契約の解除)

相手方に契約違反があった場合や、相手方が破産した場合等、顧問契約を解除できる場合について定めます。

第12条(反社会的勢力の排除)

相手方が反社会的勢力であることが判明する、または反社会的勢力と不適切な関係を持ったときは、契約を解除できることなどを定めます。

第13条(合意管轄)

契約に関連してトラブルが発生した場合に、どこの裁判所で審理するかを定めるものです。

委託する業務の内容と対価の定め方

一口に「顧問/コンサルティング契約」と言っても、たとえば、助言をすること自体が委託する業務の場合もあり、または一定の成果を出すことをもって費用が発生する合意をする場合もあります。

第2条の業務範囲と第6条の報酬項目でも示したとおり、報酬額の計算方法をめぐってトラブルになりやすいため、可能なかぎり詳細に定めておきましょう。

たとえば、「甲は乙に対し、甲のために、以下の各号の業務を委託し、乙はこれを受託した。」と定めた場合、下記のような報酬の計算方法が考えられます。

① 甲の製造する商品の販売に関する指導・助言という場合
「指導・助言」を行うこと自体が、対価の発生する業務となります。
② 甲の製造する商品の販売先の仲介という場合
こちらは仲介をすること自体が業務となりますが、月間最低成約数を2社とする、というような条件まで付け加えて合意した場合には、2社以上の成約がない限り、報酬は発生しないこととなるため注意が必要です。

印紙は必要か

顧問/コンサルティング契約の場合、委任契約(何らかの事務を遂行することを頼むこと)と解される場合には、印紙税法に定める課税文書に該当しないため、印紙を貼る必要がないのに対し、請負契約(報酬の対価として、何らかの仕事の完成を約束すること)と解される場合には、第2号文書に該当し、印紙を貼る必要があります。委任契約に該当するか、請負契約に該当するかの見分け方については、成果物の受け渡しが想定されているか、成果物に対して報酬を支払う契約内容となっているかという点です。作成した顧問/コンサルティング契約が、委任契約と請負契約のいずれに当たるかをよく確認し、間違いのないようしましょう。

まとめ

本記事では、顧問/コンサルティング契約書について解説しました。

顧問/コンサルティング契約においては、業務の内容を具体的に特定すること、どのような業務に対して、どのくらいの報酬が発生するのかということが明瞭に定められていなければならないにも関わらず、不明確なケースも散見され、トラブルに発展しています。相手方から提示された契約書に、話し合った契約内容がきちんと反映されているのかをチェックすることが必要です。冒頭でも触れたとおり、どのようなサービスを提供してほしいのかを考慮し、契約内容・形態に合わせた契約書の作成をしていきましょう。

契約審査サービス

契約審査に関するご相談受付中!
当サイトの記事をお読みいただいても問題が解決しない場合、もしくは専門家にアドバイスを貰いたいという方は、契約審査ダイレクトの資料請求をお勧めいたします。月額5万円〜専門家に契約審査をアウトソースし、契約審査業務の効率化を。
WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。 慶應義塾大学環境情報学部、青山学院大学法科大学院卒業。企業法務、国際取引、知的財産権、訴訟に関する豊富な実務経験を持つ。日本及び海外の企業を代理して商取引に関する法務サービスを提供している。2008年に弁護士としてユアサハラ法律特許事務所に入所。2012年に米国カリフォルニア州に赴任し、 Yorozu Law Group (San Francisco) 及び Makman and Matz LLP (San Mateo) にて、米国に進出する日本企業へのリーガルサービスを専門として経験を積む。 2014年に帰国。カリフォルニアで得た経験を活かし、日本企業の海外展開支援に本格的に取り組む。2017年に米国カリフォルニア州法人TandemSprint, Inc.の代表取締役に就任し、米国への進出支援を事業化する。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所を開設。世界市場で戦う日本企業をビジネスと法律の両面でサポートしている。
アクセスランキング