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2022.11.17
WEBサイト製作の業務委託契約書の作成方法と注意点

業務委託契約書は、委託者側の業務を受託者側に行ってもらう代わりに対価を支払うといった約束事を書面にしたものです。契約書作成の手間を省いてしまうと、後々トラブルとなった場合に、その手間より多大な負担がのしかかってきます。今回は、業務委託契約書においておさえておきたい注意点と適切な作成方法について解説します。

業務委託契約書を作成する必要性

様々な業種がある中で委託者側、受託者側の商習慣などの違いによって、お互いの常識が違っている事は珍しくありません。あらかじめ取引ルールを決めて事前に書面で合意をしておくと、そのような状況下でも取引をスムーズに進めることができるため、契約書の作成はお互いに安心して仕事を進めるために必要不可欠であるといえます。

ありがちなトラブルと契約書があることのメリットについて

取引を全て口約束や事前の合意を取らずに進めてしまうと、相手方から途中で一方的にキャンセルされてしまったり、制作費・金額を支払ってもらえないこと、何度も修正作業を要求されるようなトラブルに見舞われることもあります。これらは作業の範囲、金額、数量、成果物、納品日や支払日等を発注書に明記して、トラブルとなった際の具体的な解決方法を契約書にて作成しておくことで防ぐことができます。

WEBサイト制作の契約書締結までの流れ

安心して制作段階へ移行するためにも、契約書を締結することを念頭に、次のようなステップで打ち合わせを進めていくことをお勧めします。

ステップ1 WEBサイト制作の企画内容を打ち合わせる

WEBサイト制作を発注するにあたり、目的、方向性、予算などの条件を決めて、制作会社(受託者)と打ち合わせを行い、情報のすり合わせを進めます。発注が決まったら、具体的な作業範囲や仕様など業務委託する内容を明確にしていきます。
精査された内容を基に最終的な見積書をもらい、金額や支払方法も確認しておきましょう。

ステップ2 契約書(業務委託契約書)を作成して条件を明文化する

これまで打ち合わせした内容を含め、WEBサイト制作に関して委託する内容が固まったら、実際に契約書の作成し、条件を明文化していきます。

ステップ3 契約書のチェックと修正で安心して発注できる状態にする

作成された契約書を確認し、打ち合わせした内容が反映されているか確認をします。修正が必要な場合は、どのような点が問題で、どうしてほしいのかを制作会社と話し合い、契約内容を確定させていきましょう。

ステップ4 WEBサイト制作に係る契約書を締結する

契約内容が確定したら締結を進めていきます。こちらが製本作業を行う場合は、契約書を2通製本し、押印します。契約内容が、仕事の完成(WEBサイトの完成)を目的としたものである場合には、請負契約として収入印紙の貼付が必要となる場合があります。

契約書作成時の重要ポイント10選

契約書作成の際のチェックすべき重要ポイント10点についてそれぞれ解説していきます。

「仕様」に関する契約条項の作成のポイント

まず、契約書で、制作するWebサイト(ホームページ)のデザイン、機能、コンテンツ等の「仕様」をあらかじめ決めておくことです。内容が曖昧だと期待した成果物・効果が得られないというリスクがあるため、契約条項を設けたうえで、別紙にてできる限り詳細かつ具体的に「仕様」を定めるのがよいでしょう。

「対応ブラウザ」に関する契約条項の作成のポイント

「制作するWebサイトがどのブラウザで適切に表示されれば完成とするか」をあらかじめ契約書で決めておくことも重要です。すべてのブラウザで綺麗に表示できるWebサイトを制作することは現実的に困難であるため、あらかじめ、どのブラウザで適切に表示されれば、そのWebサイトが完成扱いになるのかを確認し明記しておくことが必要です。

「検収」に関する契約条項の作成のポイント

「検収」に関する規定を作成する際は、「検収方法」、「検収の期間」、「検収の基準」、「検収合格の条件」など具体的に条項を設けましょう。検査をして、仕様と異なっていた、不具合があった場合などの制作会社の負う責任について記載されているかどうかも確認しておきましょう。

「支払時期」に関する契約条項の作成のポイント

WEBサイト制作費の未払いトラブルをできる限り回避するためには、制作会社側にとっては、Webサイト制作代金のうち一部だけでも、制作開始前あるいは制作開始後の早い段階で入金してもらうことが理想的です。例えば、制作代金の半分を前金として制作開始前あるいは制作開始後1か月以内に入金してもらう契約条項を記載しておくことは、制作費未払いトラブルを避けるためには有効です。

「著作権」などの知的財産権の取り扱いに関する契約条項の作成のポイント

知的財産権は原則創作者に帰属するため、契約書上で記載がないと制作会社側の帰属となります。制作会社側にとって「著作権」に関して重要なポイントは、「Webサイト制作費がすべて支払われるまで著作権が発注する側に移転しないようにしておく」、という点です。代金を支払わないまま発注する側がWebサイトを利用し続けるということが無いよう、支払った段階ではじめて著作権が移転するようにしておくと良いでしょう。

「遅延損害金」に関する契約条項の作成のポイント

遅延損害金は、契約書に「遅延損害金」に関する契約条項がなくても請求することができますが、契約書に遅延損害金の利率が記載されていない場合、遅延損害金の利率は、民法で年3パーセントとされ、3年ごとに見直されます(変動金利制)。事業者間においては、発注する側・制作会社側の立場に応じて、遅延損害金の利率を法定利率よりも高く設定するかについて、よく検討する必要があります。

「発注する側の都合による解約」に関する契約条項の作成のポイント

制作会社側としては、発注する側の都合で途中解約された場合に備え、途中解約の場合でも支払いを求めることができる根拠を契約書に記載しておきましょう。

委託業務の内容と作業範囲に関する契約条項の作成のポイント

どのような業務を依頼するのか、どのように進めるのか、運用・保守に関する業務も含めるのか、別途費用が発生する作業は何であるかなど、委託する業務内容を具体的に明記しましょう。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)に関する契約条項の作成のポイント

契約不適合責任は、検収完了後に契約の内容に適合しないもの(納品物に不具合があったなど)が見つかった際の、制作会社側が負う責任(無償での補修、代金減額、契約解除など)内容となります。契約書に記載された内容が優先されるため、請求できる期間についても注意しましょう。

WEBサイト制作に関する契約の種類とパターン

業務委託契約は、「請負契約」と「準委任契約」に分類されます。
仕事の完成を目的としているのが請負契約です。受託者は仕事(納品物)の完成を、委託者は完成した仕事に対して報酬を支払うことを約束するものになります。委託者のみ仕事が完成する前であれば中途解約可能、受託者は契約不適合責任を負うなどの特徴があります。WEBサイトの制作のみであれば、請負契約が良いでしょう。

一方で準委任契約は、委託者が、委託された業務を善管注意義務に基づき遂行する、つまり、作業過程が主な目的となります。委託者は仕事をしてくれたことに対して報酬を支払います。委託者も受託者も中途解約可能、再委託が原則不可能などの特徴があります。準委任契約は、SEO対策や運用・保守がメインの場合に向いている契約形態です。
また依頼したい業務の内容によっては「請負契約」と「準委任契約」の要素が混在していて厳密に切り分けることが難しいケースもあるため、それぞれの特徴を理解して契約を進めましょう。

また、業務委託契約書の契約形態としては、「基本契約と個別契約を締結する」パターンと「取引ごとに契約書を作成し締結する」パターンがあります。

<基本契約と個別契約を締結するパターン>
複数の業務委託契約に共通して適用される条件を基本契約として定め、個別案件の具体的な業務内容、作業範囲、対価などの条件を個別契約として定め、締結します。
1社の制作会社に対して、複数の業務を発注する、もしくは、継続して発注する可能性が高い場合はこのパターンの方がお勧めです。

<案件ごとに契約書を作成し締結するパターン>
各案件ごとにすべての条件を定め、契約書を締結します。
追加の案件などが発生した場合は、すべての条件を定めて別途契約書を締結する必要があります。

まとめ 

委託者側、受託者側、どちらの立場にたって契約をするのかによって、検討ポイントは大きく異なります。このことから、各当事者は、自己の立場をしっかり認識してから契約書を作成することが大切です。WEBサイト制作の契約書は契約の全体像を捉えることも大切ですが、各条項については詳細をチェックしてリスクコントロールするようにしましょう。個別の事情にあった契約書の作成をご希望の場合には、専門家に助言を求めることをお勧めします。

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WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。
慶應義塾大学環境情報学部、青山学院大学法科大学院卒業。企業法務、国際取引、知的財産権、訴訟に関する豊富な実務経験を持つ。日本及び海外の企業を代理して商取引に関する法務サービスを提供している。2008年に弁護士としてユアサハラ法律特許事務所に入所。2012年に米国カリフォルニア州に赴任し、 Yorozu Law Group (San Francisco) 及び Makman and Matz LLP (San Mateo) にて、米国に進出する日本企業へのリーガルサービスを専門として経験を積む。
2014年に帰国。カリフォルニアで得た経験を活かし、日本企業の海外展開支援に本格的に取り組む。2017年に米国カリフォルニア州法人TandemSprint, Inc.の代表取締役に就任し、米国への進出支援を事業化する。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所を開設。世界市場で戦う日本企業をビジネスと法律の両面でサポートしている。
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