- 2022.02.06
企業が取引を行う際には、必ず契約書を作成すべきです。
ただしネットなどで出回っている「雛形」「テンプレート」をそのまま使うとリスクが高いので、記名押印する前に弁護士などの専門家によるリーガルチェックを受けましょう。
契約審査(レビュー)を経て個別の契約に応じた内容に設定しておけば、効果的にトラブルを防げますし、万一トラブルが発生した際にも比較的スムーズに解決できるメリットがあります。
この記事では契約書チェックの重要性やレビューを受ける際のポイントをお伝えします。
当事務所では、一般的な弁護士によるリーガルチェックと比べてコストを抑え、スピード対応しています。
ビジネス専門の弁護士などの専門家がリーズナブルな価格で御社のご事情に応じた契約審査をさせていただきますので、ぜひとも一度、ご相談ください。
目次
契約書に関する基礎知識
契約書の目的・役割
そもそも契約書は何のために作成するのでしょうか?
契約書を作成する目的や役割を確認しましょう。
契約内容を明らかにする
契約書には、契約内容を明らかにする目的があります。
法的には口頭で成立する契約が多いので、あえて契約書を作成する必要はないともいえます。
ただ契約内容が複雑な場合、契約書がないと内容が不明確になってしまいます。そうなるとお互いにどのように行動してよいか判断がつきにくいでしょう。そこで契約内容を明らかにするために書面を作成するのです。
契約した証拠を残す
口頭で契約しただけでは、証拠が残りません。
後に紛争が生じたとき、相手から「そんな契約はしていない」といわれる可能性がありますし、約束した内容と異なる主張をされるリスクも発生します。
そこで契約した証拠を残すために契約書を作成します。
トラブル防止
契約書がないと、さまざまなトラブルが発生する可能性もあります。
お互いにどのように行動すればよいかわからず、認識に齟齬が発生してしまうためです。
お互いが共通認識をもって適切に行動するためにも契約書は必須といえるでしょう。
トラブルが発生したときの解決指針とする
契約書は実際にトラブルが起こったときの解決指針にもなります。
契約書に書かれている内容に違反していたら契約違反と主張できますし、自社が契約に従って行動していれば相手から責められる理由はありません。
契約書の種類
契約書の種類は非常にさまざまです。以下では企業が締結することの多い代表的な契約書をいくつかご紹介します。
契約書例① 業務委託契約書
業務委託契約書は、企業が仕事を「外注」する際に相手方と締結する契約書です。
たとえばイラストや文書の作成、ソフトやアプリ開発、HPの制作、製造委託、情報収集などを外注する際には業務委託契約を締結する必要があります。
業務委託契約書には、発注する仕事内容や代金、代金支払時期や著作権などについて細かく記載しなければなりません。
契約書例② 秘密保持契約書
秘密保持契約書は、企業の重要な秘密を守るための契約書です。
たとえば以下のような場合に秘密保持契約の締結が必要となるでしょう。
- 従業員を雇い入れるときや退職するとき
- 仕事を外注するとき
- M&Aを実施するとき
企業が秘密を漏えいされると、開発中のアイデアや技術をライバル企業に奪われて不利益を受ける可能性がありますし、自社に対する社会の評判が低下してしまうおそれもあります。個人情報流出につながると個人情報保護法違反となり、信用低下をはじめとした大きな不利益を受けるリスクも発生します。
企業が安全に経済活動を行うため必須の契約類型といえるでしょう。
契約書例③ 取引基本契約書
取引基本契約書は、企業が取引に入る際に基本内容を取り決める契約書です。
相手方とは継続的に取引を行うことが前提となります。
たとえば製品の受発注や請負などの契約を締結する際、個別にいちいちすべての条項について確認すると契約書の内容が長くなりすぎて煩雑でしょう。
そこでまずは取引基本契約書に基本となる事項をとりまとめて、個別取引の際には簡略な個別契約書のみを作成します。
企業が業務効率を向上させるには取引基本契約が非常に有用です。
契約書に潜むリスク
契約書を作成するとき、どのような内容でもよいわけではありません。
特にネットなどで簡単に入手できる「雛形」「テンプレート」「書式」をそのまま適用すると高いリスクが発生します
以下では不適切な契約書にどういったリスクが潜んでいるのか、みてみましょう。
リスク①:契約書の記載項目の不備
契約書の雛形などを利用してきちんとレビューをしなかった場合、本来必要な項目が抜けてしまう可能性があります。
たとえば中途解約に関する条項がないために、途中で解約できるのかどうかがわからなかったり、解約方法が不明確になってしまったりするケースもみられます。
損害賠償に関する規定がないためにどういった状況で相手に損害賠償請求できるかわからなくなってしまったり、納期や報酬支払時期について記載がないために取引が滞ったりする可能性もあるでしょう。
契約には「個性」があるので、事案の内容に応じて記載事項を確定しなければなりません。
記載項目に不備があると、トラブル予防やトラブルのスムーズな解決という契約書の目的を果たせなくなってしまいます。
リスク②:契約書内容が不利にはたらく
契約書に不備があると、自社にとって不利な内容を見逃してしまう可能性があります。
たとえばイラストや写真などを外注する際、著作権譲渡に関する条項がなければ基本的に著作権は外注先がもったままとなります。すると、将来別メディアに掲載したり手を加えたりする際に、いちいち外注先の承諾をとらねばなりません。相手が納得しない場合、著作権の使用料を払わねばならない可能性もあります。
また民法や借地借家法の原則よりも自社に不利益に修正されている場合でも、気づかず契約してしまったら基本的に有効です。たとえば不動産を貸し付ける際に「賃料不増額特約」が入っていると、自社の側からテナント側へ賃料の増額請求ができなくなってしまいます。テナント側からは賃料減額請求ができるので、オーナー側に不利な契約内容となるでしょう。
リスク③:会社への損害
契約書に不備があると、会社に損害が発生するリスクも高まります。
たとえば中途解約ができないために不要となった契約を延々と続けなければならなくなったり、相手から迷惑をかけられても損害賠償できなかったりすると、経済的な損失が発生するでしょう。
せっかく委託代金を払ってソフトやアプリなどの開発を行っても、著作権譲渡を受けなかったために自由に使えなければ発注した意義が半減してしまいます。
リスク④:顧客との信頼関係への影響
契約書に不備があると、相手方とトラブルになる可能性も高まり、お互いの信頼関係が失われます。
ビジネスを成功させるため、信頼関係が命ともいえます。それにもかかわらずトラブルになってしまったら、二度と円滑な取引ができなくなってしまうでしょう。
信頼関係が破壊されて取引のチャンスを失ってしまうことも、不備のある契約書に潜むリスクです。
契約書に必ず含むべき事項
契約書を作成する際には、以下のような事項を盛り込みましょう。
目的の特定
まずは契約目的を特定しなければなりません。
売買なら商品や製品、不動賃貸借なら目的物件、仕事の委託なら委託する仕事内容などを明確にしましょう。
契約書に示しきれない場合、別紙として図面や仕様書、工程表などをつける方法もあります。
支払金額や時期、方法
代金や報酬としていくらをいつまでに支払うのか、明確にすべきです。
価額については税込みか税別かも明らかにすべきですし、契約時に具体的な金額を明示し難ければ計算式などを記入しましょう。
支払方法については一括か分割か、振込の場合は入金先の口座や振込手数料負担者についても記載しておいてください。
なお請負契約の場合、報酬支払い時期の取り決めがないと「工事が完成した後」に全額払う内容となってしまいます。一般的には契約書において数回の分割払いを定めて対応しています。
目的物の引渡し期限や方法
目的物をいつまでにどういった方法で引き渡すのかも決めておきましょう。
業務委託の場合にも、納期を定めておくべきです。
不動産売買の場合には、所有権移転登記についても記載しておくとよいでしょう。
解除
お互いに契約を解除できるケースや方法について定めましょう。
法律上は基本的に催告を行った上での解除となるため、無催告解除を可能とする場合には、契約書に盛り込んでおくべきです。
損害賠償
どういった状況になれば相手に損害賠償請求できるのか、定めておきましょう。
損害額の計算方法や予定額を決めておくとスムーズにトラブル解決できるケースがあります。
危険負担
たとえば目的物が天変地異で滅失してしまった場合などのように、当事者の故意、過失以外の要因で債務の履行が難しくなったときにどちらがリスクを負担すべきかも取り決めておきましょう。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、納品物が契約目的に沿っていなかった場合に売主や請負人に発生する責任です。買主や発注者は相手方に対し、修補請求や代金減額請求、解除や損害賠償請求ができます。
民法の原則によると、まずは修補請求を行ってから代金減額請求を行う必要があり、契約不適合責任が発生する期間も定められています。
契約不適合責任の具体的な内容や期間について民法と異なる内容を定めたい場合には、必ず契約書に記載しておきましょう。
契約期間
取引基本契約や業務委託契約、秘密保持契約、賃貸借契約などの継続的な契約の場合、契約期間を定める必要があります。期間満了時の自動更新についても記載しましょう。
中途解約
中途解約ができるのか、できるとすればどういった条件を満たせば解約できるのか、解約の具体的な方法(事前告知や書面通知の有無)なども記載しましょう。
契約書を作成する際には、上記のようにたくさんの事項を盛り込まねばなりません。必要な条項に漏れがあったり、自社にとって不利な規定を見落としてしまうと、ビジネス上の大きなリスクにりますので、契約書の量が多い場合や、自社のみで判断が難しい場合には、
ビジネス専門の弁護士に契約書の審査・レビューを依頼して事前にチェックしておくことをお勧めします。
契約書チェック時に確認すべきポイント
契約書をチェックする際には最低限、以下の内容を確認しましょう。
必要事項が漏れていないか
契約書に必要な事項が網羅的に盛り込まれているかチェックすべきです。
何が必要かは個々の契約内容によって異なるので、個別対応が必要です。
契約の目的に合致しているか
契約書の内容が契約目的に合致しているか確認しましょう。
特に雛形を適用すると、目的と契約書の内容がずれてしまうケースが多々あります。
ズレを防止するためにはリーガルチェックが役立つので、自社での判断が難しければぜひ利用してみてください。
想定されるトラブルに対応できているか
将来予想されるトラブルを想定し、対応するための条項を盛り込みましょう。
たとえば途中解約されたくない場合には途中解約を制限する条項を入れる、相手による情報漏えいが心配な場合には情報漏えいを禁止して差し止め条項や損害賠償条項を入れるなどです。
法的に認められない条項が入っていないか
契約書に法的に認められない内容を入れると、効力が認められません。
特に「強行規定」には要注意です。
法律には任意規定と強行規定の2種類があり、「任意規定」には反する内容を入れても構いませんが、強行規定に反する内容は無効になります。
また当事者のどちらかに一方的に有利な条項は「公序良俗」に違反するとみなされる可能性がありますし、不法行為を目的とする契約も無効です。
どこまでの契約内容が認められるかわからない場合にも弁護士などの専門家へ相談しましょう。
契約書のリーガルチェック(契約審査)の重要性とメリット
契約書にまつわるリスクを減らすには、リーガルチェックが役立ちます。
以下では契約審査(リーガルチェック)の重要性やメリットをお伝えします。
漏れがなくなる
弁護士が事前に契約審査をすれば、必要事項の漏れはなくなります。
雛形を使うと個別取引の実情に対応できない可能性がありますが、レビューの上修正を受けておけば、思わぬ不利益を受けるリスクを低減できるでしょう。
不利な条件を締結してしまう可能性がなくなる
自己判断で契約書の内容をよく理解しないまま取引に入ってしまうと、気づかぬうちに自社に不利な契約を締結してしまう可能性があります。
弁護士のリーガルチェックを受ければ不利な条件を洗い出して訂正を求めることができるので、不利益条項を受け入れてしまうリスクもなくなります。
円滑な取引を実現しやすくなる
契約を締結する究極的な目的は、自社と相手方双方の発展です。
自社だけが有利、相手方だけが有利では本当の意味で良い契約とはいえないでしょう。
ビジネスに詳しい弁護士であれば、そういった事情もよく理解して取引をスムーズに行いお互いが発展できるような内容の契約にまとめられます。
円滑でお互いが利益を得られる契約内容に整えられることも契約審査を受けるメリットといえるでしょう。
契約交渉の依頼も可能
弁護士の契約審査を受けて自社で相手方と交渉しても、うまく伝えられない可能性があります。そんなときには交渉も弁護士に任せられるので、安心です。
契約書のリーガルチェックは企業への「信頼」へつながります。ビジネスを成功させるためにも積極的に利用しましょう。
社内対応と弁護士対応の違い
契約書をチェックする際、自社内で対応する方法と弁護士などの専門家へ依頼する方法があります。
自社内で対応すると、どうしてもマンパワーを割かれる問題があります。経営者本人がチェックすると貴重な労力と時間を割くことで経営スピードが落ちてしまいますし、従業員に任せるとしても、本来その人がすべき業務が滞る可能性もあるでしょう。法務に関する知識が不足している担当者が対応するとせっかくレビューをしても不備が生じるおそれもがあります。不十分なチェックを行ってもリスクを低減できず、意味がありません。
弁護士などの専門家に契約審査を依頼すれば、社内の人材のマンパワーを別の作業に振り向けられます。費用がかかりますが、法務を担当する従業員を配置し、給料や社会保険料を継続的に支出することを思えば、コスト的にも法律事務所へ外注するメリットが大きくなるでしょう。特に専門の法務部のない中小企業では、弁護士などの専門家サービスを利用するのがおすすめです。ビジネス専門の法律事務所が対応すると、資格のない従業員に任せるより正確にリーガルチェックできるので安心ですし、御社や取引の状況に応じて契約書に関するより適切なアドバイスが受けられます。
メールやチャットで簡単に利用できて、契約後のサポートも受けられるメリットもあります。企業の経営を安全かつ迅速に行うため、ご検討されることをお勧めいたします。
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弁護士 小野 智博弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士。
慶應義塾大学環境情報学部、青山学院大学法科大学院卒業。企業法務、国際取引、知的財産権、訴訟に関する豊富な実務経験を持つ。日本及び海外の企業を代理して商取引に関する法務サービスを提供している。2008年に弁護士としてユアサハラ法律特許事務所に入所。2012年に米国カリフォルニア州に赴任し、 Yorozu Law Group (San Francisco) 及び Makman and Matz LLP (San Mateo) にて、米国に進出する日本企業へのリーガルサービスを専門として経験を積む。
2014年に帰国。カリフォルニアで得た経験を活かし、日本企業の海外展開支援に本格的に取り組む。2017年に米国カリフォルニア州法人TandemSprint, Inc.の代表取締役に就任し、米国への進出支援を事業化する。2018年に弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所を開設。世界市場で戦う日本企業をビジネスと法律の両面でサポートしている。
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